the scent of Jasmine ~ Akiko Endo Essay Blog

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『財界』(2011.12.06号)

 『財界』(2011年12月06日号)に寄稿しました。

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<内容>
 ニューヨークの住まいで9.11テロに遭遇しました。同時多発テロという未曾有の惨事は、人間の憎悪を生み、行き場のない悲しみをもたらしました。この体験を通して、「心の底から本質的な生き方をしたい」――。そう強く思うようになりました。
 
 惨禍の中で救急隊員の命懸けの救命の姿を目の当たりにし、助けられた命と捧げた命の引き換えには痛切な思いが残りました。生き残った者は自分の命をどう使うかが今後の人生で何よりも大事と思うようになりました。
 
 ファッションデザイナーとしてキャリアをスタートし、24歳で企画会社を立ち上げました。ブランド開発と新ファッションの戦略的プロジェクトなどを手掛けてきました。ファッションの世界を選択したのは、当時は女性の力を発揮できる業界は実に限られており、その限られた選択肢の一つだったからです。
 
 ファッション業界でキャリアを積み、1982年にニューヨークに拠点を置きました。ニューヨークから世界を飛び回る日々が続く中、遭遇したのが9.11テロでした。
 
 選択した道を歩きながらも、時代の変化に対応した納得できる確かなものを求めて模索する自分がありました。
 
 しかし、新たな道にシフトする動機は運命的なきっかけを要します。それが9.11テロでありました。事件後、喧騒を逃れて静寂な大自然に身を置き、自分を見つめ直す復活の旅路を経て、新たなライフワークに導かれました。
 
 自然の営みに癒された体験、枕辺に運ばれる花の香りに心が癒された時、心から「心地良い」「幸せ」と感じられるもの、人と心を癒すものを提供できたら――。その思いが込み上げてきました。香りの力を生かした、原料からこだわるパーソナルケアー商品の開発という全く思いがけない分野に踏み込むことになりました。ニューヨークから長時間かけてタイを往復し、私の香りのコンセプトを実現してくれるメーカーと出会い、私の考えに賛同して誠実に開発に賭けてくれる最高のパートナー(メーカー)に本当に感謝しています。庭に降り立った時に漂う自然な香りの実現はメーカー独自の天然素材を活かした製法が活用されています。
 
 これからは香りを通じて多くの人への精神的なサポートを果たしながら、商品流通と社会貢献の両立を果たす事が、9.11テロから生き残った私の進む道と信じています。