the scent of Jasmine ~ Akiko Endo Essay Blog

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『エコノミスト』(2010.11.09号)

 『エコノミスト』(2010.11.09号)から取材を受けました。

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<内容>
●起業家新時代
ポートフォリオ・ワン
「天然の香りが心を癒やす植物由来のアロマ製法を展開」 遠藤明子社長

 命の重さとは何か、を自分に問い続け、旅に出たタイとカンボジア。そこで出合った「森林の静かさとジャスミンの香りが、事業の始まりでした」と語るのは、植物由来のオードトワレなどのアロマ製品の開発に取り組むポートフォリオ・ワン(米ニューヨーク)の遠藤明子社長。

 大手百貨店のニューヨーク駐在員事務所長を務め、ブランド開発の会社を米国で起業するなど、米ファッション業界で活躍してきた遠藤さんがアロマ事業に乗り出すきっかけは、同時多発テロの被災だった。

 ワールドトレードセンターから数百メートルのハドソン川を臨むビルの18階に住居を構えていた遠藤さんは2001年9月11日、自宅で過ごしていた。午前8時40分の衝撃音から始まった史上最悪のテロ事件はその後、爆発音と人々の悲鳴、サイレンの音、そしてビル崩壊とともに雨のように落下してくるビルの残骸物と大量の灰へと続いた。遠藤さんは命からがらハドソン川に待機していた工事用のだタグボートに助けを求め脱出。

 米国経済の象徴でもある巨大ビルの崩壊を目の当たりにした遠藤さんは、「形あるもののはかなさ」を実感する一方、救助活動に当たる消防隊員やボランティアの人々の心の優しさに触れ、「人の心にかかわるライフワーク」を模索しはじめた。

■自然の成分の効果を発揮できる商品づくりのために受注生産

 「事件からの生き残った意味を見つめよう」と2004年8月、東南アジアへの旅を決めた。バンコクのホテルでは歓迎のためのジャスミンの花輪が手渡された。このとき、「自然の香りに癒され、久しぶりによく眠れました」という。カンボジアのアンコールワット遺跡も訪ね、周囲のジャングルに足を踏み入れると「いままで体験したことのないような静かさに身をおき、母の胸に抱かれる子どものような安堵感」を感じたという。カンボジアをあとにした遠藤さんはその後、偶然タイで天然素材の成分を生かしたアロマ製品の開発をする研究所を紹介され、「香りで人を癒すブランド」をつくることを決意。人を癒す事業に熱い思いが込み上げ、なんとその日のうちにビジネスプランを書き上げた。

 2007年6月に立ち上げたブランドは「LA LUMPINI(ラ・ルンピーニ)」。ルンピーニとは、ネパールにあるお釈迦様の生誕地。タイではバンコク中心部にある水と緑に囲まれたルンピニ公園が思い浮かぶ。

 遠藤さんがこだわったのは、自然の成分の効果を損なわない製法で時間をかけて生産したもの。そのために大量生産はせず、受注生産することを決めた。もう1つは、「納得できる香りのイメージになるまで研究所と試行錯誤を重ね、自分がいいと思ったものを提供すること」だった。

 現在、販売しているのはオードトワレ、ボディーローション、ボディースクラブ(角質を落とす天然塩)、ボディーソープ、ランジェリーソープなどの6アイテム。香りの原料には動物性油脂を使わず、すべて植物性の油脂と天然水を利用。アルコールなど揮発材も一切使っていない。石鹸もコールドプロセスといわれる熱処理しない製法で、「天然ハーブと蜂蜜、ビタミンEたっぷりのオリーブエキストラクトとアボガドなどの自然成分オイルだけを使って1週間じっくり寝かせてつくります」という。

 現在はオンラインショップ、専門百貨店、国内主要都市でパーティーグッズ・ギフト専門店を展開するレイジースーザンで扱っている。「自然を癒やすための香り、メンタル効果を上げる香り」という遠藤さんのコンセプトは、じわじわと日米双方のユーザーに口コミで広がっている。「次のステップは販売チャネルを広げることです」と遠藤さん。「自然成分の効果が発揮できる丁寧な商品づくり」を理解してもらえる事業の支援者を求めているという。

 将来は衣食住のライフスタイル全般にわたり、精神的な充足感を満たすような製品開発や企画などに幅広く取り組みたいという。

 現在は、売り上げの一部を、子どもたちの権利が守られる世界を実現するために活動するユニセフ(国連児童基金)への寄付活動に力を入れている。(編集部)